1、友達になりませんか

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 電車が来るまであと二十分弱。お互い同じ学科で同級生だから名前だけ知っているという状況。お互い何が好きかなんて何一つ知らない。電車が来るまでの間、私たちは軽く自己紹介をすることに。 「俺は小説を書くことは日常って感じなんだけど一応趣味ってことで。出かけるのが好きで計画無しで遠くに行ったりするかな。よく読む小説のジャンルはSFとか、恋愛系。たまに恋愛系も書いたりするかな。ちょっとつり目なのは気にしてるかな。従兄弟につり目で怖いって言われるから。あとは大学で見た通りぼーっとしたり、寝てる」  後半は大学でよく見かける彼なのでクスッとわらってしまう。でもつり目を気にしているのは意外だった。私には優しそうに微笑む彼の眼を怖いと思えなかったから。 「あ、次は私の番、ですね。私も小説書くの日常って感じだから趣味なのかな。読むことも書くのも現代ファンタジーが多いかも、です。読むのだとミステリー系とかも好きですね。あとは映画鑑賞とかもよくしますね」  自己紹介が終われば自然と会話のネタはすぐに見つかった。その会話は電車が来るまでの残り時間途切れることは一度も無かった。 会話の内容は主に本について。好きな作家から始まってこれまで書いてきた創作作品の話まで広がっていった。会話は私が乗り換えの駅まで続いた。敬語は最後の最後まで抜けなかったけれどとても楽しくて時間があっという間に過ぎていったように感じた。  一人、私の降りる最寄り駅に向かう電車の中で頬が緩んだのは久しぶりだった。  自宅に着いてスマホで「声をかけてくれてありがとう」とお礼のメッセージを送ろうとしてあることに気づく。 「会話に夢中になりすぎて連絡先交換するの忘れた。次、会った時にでも交換できたらいいな」  今度彼に会った時、次は私から声をかけたいと思ったのは私だけの秘密。
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