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2、タイミング
次の日。
朝、大学内で香月君を見かけて声をかけようとした、のだけれどその足はピタリと止まってしまう。彼がいつも一緒にいる男子友達と一緒にいるのを見てしまったから。仲良さそうに話している彼らの話の途中に入る勇気が無くて昇降口に向かおうとしていた足を食堂で待っている私の友達の元に向かった。
昨日はオリエンテーションがメインで講議は無かったのだが、今日から通常の九十分の講議がある。火曜日の今日は文学部の二年生全員が必修の講義がある。そこで香月君と会えたら、席が近ければなんて淡い期待を抱くもそれはすぐに消え去ってしまう。
理由は簡単。その講議が指定席ではなく、自由席だから。指定席なら席は少し近かったが自由席の場合、大半の学生が後ろの席に座っている。香月君も後ろの席に座る方だったのをすっかり忘れていた。私と友達の恵理ちゃんと桜花ちゃんは講議の大半は前の席で聞いている。そのため話しかけるよりも席が近くなることは夢のまた夢の話なのだ。
午前の講議が終わり、食堂でお昼を食べているときにさりげなく香月君の連絡先を聞いてみたのだが……。
「香月新……?誰だっけ。私知らない」
「香月君だっけ?ごめんあたしも知らないや。香月君と彼の友達もあまり話さないからわかんないや」
と言われてしまった。それもそうだ。一年の時にあまり関わっていなかった人の連絡先なんて持っていない方が自然なのに。
「そっか。桜花ちゃん、恵理ちゃんありがとう」
昨日のうちに連絡先を交換していればこんなにモヤモヤすることなんてなかったかもしれないのに。なんて後悔しても仕方ないのに、ね。
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