2、タイミング

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 月曜日。  先週行えなかった月曜日の講議も今日から始まる。大学に着いて桜花ちゃんと恵理ちゃんに会ってから少しそわそわと落ち着きがないのを二人から指摘された。 「ここなんか嬉しそう。なんで?」 「あー、実は今日の4限目に創作の授業があって。しかも講議の先生が坂口先生で、嬉しくて」 「坂口先生って、現代文の小説の歴史の話してた先生であってる?」 「うん、その先生。教えるの上手だし、話も面白くて講議楽しみなんだ」 「じゃあ午前の講議頑張んないとね」 「……頑張ります~」  そんなやりとりをしながら午前の講議を受けに行った。単位を取るためには全十五回の講議のうち三分の二以上出席しないと単位テストを受ける資格がもらえない。テストを受けない講議に関してはレポートを提出しないといけない。 「桜花ちゃんと恵理ちゃんは前期の講議はテストとか多いの?」 「テストは多いかも。でも、レポートも多いからどっちもどっちかも」 「私はテストが多いかも。後期はテスト少なくしたいなぁ……」  そんな話をしながらも視界のどこかで彼を探してしまう。でも探しても必修や同じ講議を取っていない限り会えない。あの日一緒に帰れたのも奇跡に近いのでは、と思ってしまう。  ああ、なんだか彼は自由気ままな猫みたいな存在だと思ってしまう。ふとした時に傍にいて、気が付いたらいなくなっている。本当に猫みたいだ。  講議を受けながらぼんやりと空を眺める。  今日の帰りも会えないかもしれない。声もかけられないかもしれないと頭の中がぐるぐるとマイナス思考になっていく。小さくため息をつきながら教授の話をうわの空で聞きながらふと、今日の創作の講議があることを思い出す。 (そういえば、香月君作品作るの日常だって言ってた。もしかしたら、今日の創作の講議で会えるかもしれない)
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