彼氏の気持ち 彼女の気持ち

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彼女を半ば無理矢理、個室の部屋に引き摺り込んで、席に座らせた。楢崎も私の後に続いて部屋に来てくれた。 「私もぜひお話を聞かせてください。」 と、営業スマイル付きで。 そう、彼女の話だけはまだ聞いていなかった。このまま奏大の提案というか、作戦に乗って、美麗さんが婚約者に乗り換えて、今回の件はなしでとなるのを待っても良かったのだが、ふと思ったのだ。 奏大はいつも大事なところを見誤るところがあると。 「あなたたちに話すことなんてないわ。」 美麗さんの表情は幾分は解れているが、まだ、私たちに心を許したわけではない。 「美麗さん、あなた、本当に結婚したいんですか?」 楢崎が尋ねると美麗さんは「当たり前でしょ!」と言いながらも、下唇を噛んだ。 「私から言わしてもらうのもどうかと思いますが、松野さんにあなたはもったいないと思います。あなたはいつも身なりも綺麗にしているし、顔だって可愛らしい。それにご実家もとても恵まれている。もっと素敵な方を見つかるはずです。」 楢崎が続けてそう言うと、美麗さんは小さな声で「だって……」と言った。 「……私…本当は俺様系が好きなの……でも、そういう男って私の言うこと聞いてくれないじゃない!!いつもこっちが振り回されてばかり。だから、結婚するなら奏大くんみたいな人がいいって自分に言い聞かせたの。私の動画配信に協力的な人。なのに、今まで美麗ちゃんの好きにしていいって言っていたくせに、今回の件に関しては全然譲ってくれないんだもん。」 もう嫌だと言いたげに美麗さんは机に突っ伏した。私は楢崎と顔を見合わせた。
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