ワーちゃんが来てから

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「うん」  別に隠すことでもないので淡々とした風に答える。 「これはずっと前にエントリーシート出したのが今になって通知が来たんだけどね」  もう用は済んだのでシャットダウンする。 「お昼、何がいい?」  ご飯ならまだジャーに沢山残っているけれど、と思い出しつつキッチンに向かう。 「仕事、無理に探さなくていいよ」  振り向くと、夫はベビーサークルの中から玩具のヒヨコ入り卵を拾い上げて胸に抱いた座敷童の手に持たせる所だった。 「二人で食う分だけなら俺の稼ぎで何とかなるし」  パカッと小さな手が開けて示したおもちゃのヒヨコと嬉しそうな赤子の笑顔を見下ろす夫の細めた瞳の奥が微かに潤む。  そこから夫婦の声が揃った。 「今はもうワーちゃんがいるしね」
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