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「あれ?」
しばらく来ない――といっても半年に満たないくらいの間だが――内にフロア内の配置換えがあったようだ。
迷いつつも案内図で示された雨具を揃えたテナントのある奥に足を進める。
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「ありがとうございます」
店員さんの声に軽く頷いてまた歩き出す。
透明なビニル地で中心部が水色、縁に行くに従って黄色を経て赤に至るグラデーション仕様の傘。
今まで買ったことはないタイプだが、何となくワーちゃんの最初に着ていた和服に似ているので買った(あの着物自体は今は畳んで洋服ダンスに仕舞ってあるけれど)。
取り敢えず雨具を手に入れてしまうと、ホッとすると同時に何となく急いで帰るのにも疲れてぼんやりと周囲のテナントに目を走らせる。
大人用の雨具を扱ったコーナーはそのまま子供用の傘や長靴、レインコートを置いたコーナーに続いていて、その先には子供服やベビー服の売り場があった。
もう梅雨に足を踏み入れた季節なので半袖がデフォルトになっている。
うちにあるベビー服は長袖の暖かめのばかりだから、半袖のも一、二枚ワーちゃんに買っていこうか。
あのピンク地に青紫の紫陽花柄の甚平は似合いそうだ。
それとももっと向こうのマネキンが着ている黒地に向日葵模様の半袖のカバーオールがいいかな。
外には連れていけないけれど、あのマネキンの被っている水色のチューリップハットも買おうか。
新しい服特有の糊じみた匂いの漂う中、何となくワクワクしながら足を進める。
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