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「東京にある、私立羽多学園から来ました、山内尚香です。よろしくお願いします!」
さっきまでのちょっとしたしみじみした気持ちを返してほしかった。
この人、本当になんでうちの高校に転入したんだろ。
私立羽多学園って、自分でも分かる進学校だ。こんな、この地域の受験生皆が滑り止めにするような掃きだめに、なんで。
「三浦の隣が山内の席だからな。そこに座れ」
「はい!」
よりによって自分の隣なのか。
別に嫌とかじゃないけど、自分はコミュ力もそんなに高くなく、きっと彼女……山内さんは幻滅してしまうだろう。
「えへへ。また会ったね」
山内さんはニッと手を振る。小さく手を振り返すと、そのまま座った。
「じゃあ、ホームルームを始める。始業式で校長先生が話していたとおり、新学期が始まってみんな浮ついているだろうが……」
校長の話に便乗するなんてネタ不足なのか。
ちらりと山内さんを見ると、真剣なまなざしで担任の話を聞いている。
ああ、よく話す明るい人だけど、話もきちんと聞くタイプなのか……まぁ頭いいみたいだし、そうだよね、と前を向く。
「いいか~、気を緩ませるんじゃないぞ。二年生は大事な時期だからな」
それ、一年の時も聞いたような気がする。まぁ、いつの時期も大事にしろということなのだろう。
山内さんが隣で真剣にうんうんと頷いていた。
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