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※※※
「や……っや……」
何だか、ぼんやりと声が聞こえる。
「ま……まや……」
それが段々とくっきり輪郭を帯びていく。
「真矢……真矢……」
……名前?
私、今ここで何を……。
ハッ。
パチッと目が覚める。
知らない天井が視界に映った。
「ここ……どこ」
「真矢!」
その声は……。
「お母……さん?」
「もうあんた、本当にすっごく心配したんだから!」
「真矢っち!」
「真矢ちゃん!」
「みんな……」
「あんなところで気絶するバカがいるか! もう本当、死んだかと思って私心臓が止まりそうになったんだから!」
ああ、私、気絶してたのか……。
「でもよかった、無事で」
みんなが涙ぐむので「そんな大げさな」と思いつつも、少し嬉しかった。
「そういえば……橘久は?」
「え?」
「橘久はどうなったの?」
「ん……ああ、ライトくんね。彼は今警察から事情聴取を受けてるよ」
「あんな奴、あのまま少年院に行ってしまえばいいんだ」
「ちょっと尚香、言い過ぎ」
「なんでよ! そのせいで真矢っちがこんなことになったんだから!」
二人の掛け合いがおかしくて、フフッと笑ってしまう。
「笑うところじゃない!」
「ご、ごめん。すっごい真剣な尚香がおかしくて」
も~と口を尖らせる様子に、また笑顔になってしまう。
「三浦真矢さん、目が覚めましたかね」
看護師さんが部屋に入ってくる。
「はい。心配かけてすみません」
鏡を見なくても分かるくらい、今の私は清々しい表情をしているんだろうな、と思った。
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