プロローグ――魔王は既に死んでいる――

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「何か、おかしいぞ」  勇者は魔王の姿を見て、違和感を覚えた。  魔王の姿については、魔王の居城で強制労働させられていた者をはじめ、多くの人々から、時には魔物からも情報を得ていた。  だが、得られた情報に対し、何かが違う。  勇者は魔王の巨大な顔に近づき、額を凝視する。  額に穴が開いている。 「何か足りないと思ったら、宝石が無いんだ」  宝石――それは魔王の額にあるトレードマークというべきもので、虹色に輝く美しいものである。大きさは人間の(てのひら)くらい。  ――なぜ、宝石が無いのだ?  ――今、目の前で倒れている魔王は偽者なのか?  ――いや、違う。  ――城の中は隅々まで探索済みだし、魔王の姿をしているものは、この一体のみ。  ――つまり本物だ。
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