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男が町中を歩いていると、壁に貼られた何枚かの紙が見えた。
紙には、それぞれ似顔絵が描かれており、何の変哲もない普通の顔から美男美女、悪人面と様々である。
似顔絵の上には「指名手配」という文字が、下には罪状と懸賞金額が書かれている。
これらの紙は、警察騎士団が作成した指名手配犯のポスターである。
警察騎士団は民の安全を守るために国王によって組織された治安維持組織であり、何らかの犯罪が起きると、馬に乗ってやってくる。
通報の手段は、口頭や手紙によるものから、魔法使いの水晶玉によるものまで様々である。
そんな警察騎士団が作成した指名手配犯のポスターだが、一枚だけ奇妙なものがあった。
罪状は窃盗。ここは、おかしくない。
だが、懸賞金額が桁違いに大きい。
似顔絵は普通の顔ではなく、仮面を着けている。仮面は、のっぺりとしており、目、鼻、口の所に穴が開いている。
名前もおかしい。「いつの間に仮面」と書かれている。
――指名手配犯なのに、勝手に適当な名前を付けてるんじゃねえよ。「いつの間に仮面」って何だよ。
男は吹きだしそうになる。
警察騎士団も面白い事するものだ、と男は思った。
――警察騎士団か。何度か追いかけられた事があるけど、一度も捕まった事はねえや。
男は警察騎士団に追いかけられた時の事を思い出した。
罪の有無にかかわらず、警察またはそれに準ずる組織に追いかけられる事は、大抵の場合、気持ちのいいものではない。
それは、いつの時代、どの世界でも共通である。
だが、男は楽しそうな表情をしていた。
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