内部反乱者

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こんなこと、おかしい。 私は不満を募らせていた。 私はしがない1人の会社員だ。 この会社が立ち上げられた時は、ぎこちないながらも全員の活躍の場があった。 それぞれ自分にしか出来ない仕事があって、それを任せて貰っていた。 社長はキラキラした目ですべての世界を見ていて 何度転んでも起き上がって それを全員総動員でそれを支えていた。 一緒に成長していくのが楽しかった。 それなのに、、、 日に日に状況は悪化していた。 40年もこの会社に務めてきたが、 今となっては、活躍するのは一部の社員のみ。 活躍といえば耳聞こえはいいが、その実態は酷使である。 朝から晩までこき使われ、緊張が抜けずストレスが溜まっていく。気休めの休息もつかの間、また次の日こき使われるのは、同じご贔屓メンバーだ。 それでも彼らは健気に社長の命令に従う。 そんな彼らを尻目にみながら、 私を含むその他の社員は活躍の場を失い、働くことを忘れていった。自分にしか出来ないはずの仕事は、ご贔屓メンバーがやっている風に誤魔化すことで、やったことにされた。 怠惰の極みを尽くすものもいれば、働けないことがストレスとなるものもいた。 私達は全員、社長を助けたい、一緒に楽しく働きたいと思っているのに、その思いは虚しく今日も不平等労働は続く。 40年前の活き活きとした会社からは想像も出来ない、どんよりと澱んだ雰囲気の中で、私は憤っていた。 今の会社は、働いている人の疲労も、活躍の場がない人のフラストレーションも、パンク寸前ギリギリの状態なのに…社長はそれに気づかずに平気でいる。 会社が成り立っているのは私達社員がいるからということを忘れて、それをちっとも省みずに。 それでも、何故私達が今まで社長に従ってきたかというと、一重に社長が好きだし、この会社で生きる以外の選択肢が無いからだ。 だが、それも限界が来た。 同僚は見た目がデカくて屈強で使いやすいのか、ご贔屓メンバーの筆頭になっている。 ある日その子は仕事が忙しすぎてストレスが溜まり、全身が強ばり動けなくなってしまった。仕事など出来るはずがない。社長は気休めの休みを出したけれど、また次の日には懲りずにその子に仕事を回そうとしていた。 これには私も堪忍袋の緒が切れた。 そして最初に戻る。 こんなこと、おかしい。これ以上続いてはならない。 そして私が思いついたのが内部反乱だった。 今までは社長の暴君ぶりに呆れつつ、社員がなんとか辻褄を合わせて仕事を遂行してきた。 が、それがダメだったのだ。 ボイコットをして、無理やりに分からせるしかない。今のままでは限界を迎えるという事を強烈に実感させるのだ! 使命感に燃えた彼女は、即座に実行に移し、彼女を中心とした周りの社員達も働くことを辞めた。 そして彼女の部署は完全に働きを停止した。 ----------------------------- 「あ〜、これは四十肩ってやつだね」 医者がそう言うと、病院の丸椅子にしょんぼり腰掛けた中年の男性はため息をついた。 「先生、なんで急にこんな腕が上がらなくなっちゃうんですかね…今まで肩こりを騙し騙し湿布で誤魔化してたのがいけなかったのかねぇ。ジャケットも上手く着れないし、困ったよホント…」 「あ〜それもあるねぇ。あと、身体動かしてないでしょ!ずーっと座ってばっかで同じ姿勢。そりゃ一部に負担かかるよねぇ。」 「ハハ、バレちゃいましたか。こんなお腹じゃあ、仕方ないか。つい、仕事が忙しくてねぇ。」 「赤ちゃんの頃は全部の関節筋肉が機能的に働くから肩こり腰痛がないらしいですよ。大人になるとそれを忘れちゃう。筋肉にはそれぞれちゃんとした役割があるんだから、何か運動してそれを思い出してみたら肩の具合も良くなるかもねぇ。 レントゲン撮ったけど、骨とかは何も異常ないから、安心してね。病院では湿布渡すくらいしか出来ないんだけどね。それくらいで済んでよかったよ! 身体壊れてからじゃ遅いから!身体はそれを教えてくれるために不具合を起こすんじゃないかと私は思ってますよ。自分の身体と向き合って大事にしてあげてくださいね。」 「そうですね…今までなにもして無かったからな。自分の身体と向き合う、か。なんかやってみます!」 身体の持ち主である“社長”に対する、肩周辺筋肉群“社員”たちの内部反乱は成功に終わったのであった。
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