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身体から流れ出した血が広がっていく。息をするにも苦しい。頭から足まで激痛が響いている。傷口に熱を感じるのに、身体の芯のほうは冷えていく。
血とともに大事ななにかが流れ出しているのがわかった。
「まだ、……まだ、だ」
呻く視線の先には、刀身が折れた刀が落ちている。
柄に巻かれた赤い緒。結われた糸の一本一本まで血が染みこんで赤黒く汚れている。熾烈な旅路を仲間と、この刀とともに超えてきた。父が青年のために作ってくれた刀だ。鍔には青年の名前にちなんだ桃の意匠が彫られている。
折れた刀のそばにぽつりぽつりと赤い雫が落ちてくる。
男が持つ刀の切っ先から滴り落ちる血だった。
「……」
青年は血で濡れた刀身に沿って視線をあげた。身体は痺れて動かない。刀に伸ばした指先の感覚はすでにない。それでも刀を手にしようとする動きは痙攣に似ておぼつかないものだった。
おぼろになっていく視界で男の握る刀を見上げた。
鍔にはよく見知った、桃の意匠が彫り込まれていた。
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