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青年の瞳から命の光が消えていった。
それを見届けて、男は静かに面頬を外した。
床に落ちている折れた刀身に男の顔が映り込む。
その容姿は青年のものと似ていた。青年から少年の幼さが抜けた精悍な顔立ち。他人の空似とは言い切れないほど似通った姿だった。ただ、男の眼差しは光の射さない井戸の底のように暗い。
男は青年の襟首を掴むと、まだ温かい死体を広間の奥へと引きずっていく。
「お前は鬼を殺しつくした」
低い声で呟いた。
「その末に、自身が鬼になっていることに気付く」
広間の床には引きずられた跡が血の帯となって伸びていく。
男の影が伸びる。人の形をしているようで、頭に生えた二本の角の影が落ちている。
「大役を終えて帰還したところで、誰もお前を迎えてはくれない。恐れられ、憎まれ、罵詈雑言と刃を向けられる。おおよそ人の扱いではない、鬼のそれだ。お前はもう人ではなく、鬼だから」
血で濡れた身体を引きずる、鈍く湿った音が暗い広間を這う。
「それでも父母だけは自分を受け入れてくれる、そう思うだろう。お前が鬼退治に出たのは二人のためだった。彼らの人生が何者にも脅かされることのないように。彼らが笑って過ごしていけるように。辛い旅路もふたりのことを思いながら乗り越えた。どんな姿形になろうとも父母だけは抱きしめてくれる、なにの迷いもなく思うだろう」
黒い井戸の底で揺れる黒い水面のように沈んだ声で男は続ける。
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