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横たわる死体。その身体の下には、さらに別の死体があった。庭園には無数の死体が幾重にも折り重なっていた。全てが同じ衣装に陣羽織を身に着けて、おなじ顔をしている。
彼らは仲間とともに鬼の島にやって来たあの日を繰り返している。
城のなかで自身の死体が山積みになっていることも知らずに、城を目指してやって来る。
そのたびに男は青年を斬り捨ててきた。
それでも青年は未来を信じるまっすぐな眼差しで、幾度となく男の前に現れる。
使命感に燃え輝く瞳。頭の上からつま先まで歪むことない芯。自分の道に一切の疑いもなく迷いもない。道行く先にあるものは朝日のような希望だと信じている目。
自身が鬼になることを知らない。
両親をはじめ、守りたかった存在すべてに拒絶されることを知らない。
死ねない身体でひとり生き続ける孤独を知らない。
未来などないことを知らない。
一本桜は彼らの死体を養分にしてつねに満開に狂い咲いている。
鬼であるだけであらゆる鬼を斬り殺してきた。狂った時間のなかに置かれたのは、鬼たちの呪いかも知れない。
真っ直ぐな志でやって来ては殺され続ける青年か、何も知らない無垢な生き物を殺し続ける男か、繰り返される虚ろな時は、どちらに降り注ぐ呪いだろうか。
桜のように狂っているだけかも知れない。
折れた刀を青年の死体へと放る。
柄に巻かれた赤い組紐。桃の意匠が施された鍔。
もう、それをくれた父の顔も思い出せない。食事が必要ない身体になり、食べ物の味も、母の顔もきびだんごの味もわからない。ふたりの声すら忘れた。
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