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空はよく晴れ、波は穏やかだった。
彼ら四人を乗せた木船は、潮の香りに導かれるようにしてその島にたどり着いた。
簡素な港の桟橋に、仲間たちに続いて青年が降り立つ。黒髪をひとつに束ね、顔つきは少年のあどけなさが残っている。しかし、その眼差しには強い意志を宿した光があった。手に持つ刀を慣れた動作で腰に帯びた。海風に陣羽織がひるがえる。
青い空に薄紅色の花びらが舞っていた。風に遊ぶその様子をすこしのあいだ眺めてから、青年は歩き出した。
港のそばには小さな町があった。町の中央を伸びる広い通りには雑草がひざ丈まで生い茂っている。立ち並ぶ建物は潮や雨風に晒されて久しく、人が生活している気配はなかった。屋根や雨どいから生えた草が海風に揺れている。
青年と彼に従う三人は、無人の町を足早に抜けていく。
確固とした足取りと同様、彼らの瞳には真っ直ぐな感情がある。各々の視線の先にあるのは島の高台に聳え建つ、天守に漆黒の瓦を冠した城だった。高い塀が城を囲み、堅牢な門が進路を拒んでいる。
「ようやく、ここまで来れたな」
町外れの林で、木の上から城の様子を伺っていたサルがそう呟いた。
短い白髪の男だ。筋肉質で大柄な身体に反して、軽々とした身のこなしで幹を降りてくる。
するとイヌがすかさず口を開いた。
「ちょっと。まだ気を抜いちゃダメよ。まだまだ、ここからなんだから」
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