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肩口から流れる、青みがかった黒髪を指先でいじりながら、彼女はこれみよがしに顔を顰めてみせる。
サルはいつものよう、反射的に眉根と目じりを吊り上げて言い返そうとするが、
「敵の本拠地を前にしても挨拶代わりの言い合い。うんうん、平常運転だねー」
キジが二人のあいだに入り込む。髪の色は深い緑で、赤い隈取をした目で無邪気に笑っている。少年の笑顔を前に、サルもイヌも素直に口を閉じて身を引いた。
「ここでひとつ、腹ごしらえをしとかないか?」
温かなその言葉に三人は振り返る。刀を帯びた青年に視線が集まった。
「これが最後のきびだんごだよ」
包みを解いて仲間たちへ差し出す。事あるごとに食べていた団子が、人数分しか残っていないのを見て、誰もが感慨深げに目を細めた。
「おやつ感覚で食べてきたけど、最後って思うとなんだか……」
イヌは手に取ったきびだんごへ慈しむような眼差しを注いでいる。彼女のとなりではサルが何度も頷いている。
「てゆか、全部きれいに落ち着いたらさ、きみン家にお邪魔していいかな。そしたらお母さん特製のきびだんご、できたてで食べられるよね?」
キジはきらきらとした目で青年を見上げた。
「是非。きみたちが来てくれたら、母さんも父さんも喜んでくれるよ」
「両方とも酒はイケるか?」
盃を傾けるしぐさをしてサルが言う。
「二人とも好んでよく飲んでいたよ」
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