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「里で漬けてた梅酒がいい塩梅になっている頃だ。ともに飲めるヤツがいなくなって持て余していたが、そりゃ良かった。お前ん家で空けよう」
「あたし、お台所借りてたくさん料理を作りたい。ご両親にも、あんたにも、お腹いっぱい食べてもらいたいわ。それがあたしなりの感謝のしるし」
「旨いつまみも作ってくれよ」
「もちろん、まかせてちょうだい」
サルとイヌは心底楽しそうに笑いあう。些細なことでぶつかり合う二人だが、ともに素直になれない不器用な似た者同士。ときおり、気心の知れた親友のように笑いあう様子を、キジと青年は穏やかな笑みで見守って来た。
「じゃあ、ぼくは踊りたいな。踊りを見て欲しい。みんなの前で踊りたい」
「とても楽しい時間になるだろうね。いまから楽しみだ」
青年の言葉と表情は強い希望で満ちていた。
手にした最後のきびだんごを掲げる。
「闘いはこれが最後だ。城にいる鬼たちと、本丸の首魁を退治すればこの国から鬼はいなくなる。もう怯えて生きなくていい、悲しい思いをしなくてもいい、穏やかな日々を過ごせるようになる」
この島にたどり着くまでの長い道のりを思い出す。いくつもの出会いがあった。その中には、鬼に挑んで散っていった者や平和を祈るも志半ばで諦めた者もあった。
青年たちの背にはそんな彼らの意志や願いも乗っている。
「ここまで戦い抜いてきた、ぼくたちなら出来る。ぼくたちにしか、出来ない」
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