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「どうゆーことですか!」
「別にカレがいない、好きな人もいないなら問題ないですよね?」
「いや、あるでしょ? 梨乃さんはどうするんですか? だいたい私と貴方は知り合ったばかりなんですよ!」
「そんなこと、運命の出逢いは突然に。ですよ。あと、梨乃は初めからその気はなかったんです」
勝手極まりない捲し立てに、すぐに言葉が続かなくなった。梨乃さんは初めからとは、二股とか浮気相手だったとかだろうか。そんな相手が結婚の封筒を持ってくるなんてことがあるとは思えない。
「もう別れましたから」
「別れちゃったんですか?」
「あの封筒は破棄してって意味ですよ」
言葉に言い淀む。
自分で破棄すれば良いのでは? と、思った言葉を引っ込めて別の言葉を探すが、彼の方が一枚上手だった。
「そもそも、貴女が変な事を言うから、母に婚約破棄されたーとか、別かれたーって言いづらい状況だと思いません?」
「つまり僕らが本当に恋人同士になれば問題ないですよね?」
「なにを馬鹿な事を! だいたい幾つ離れてると思ってるんですか」
「年齢なんて、大した問題じゃないでしょ?」
いやいやいや、大した問題だ。
梨乃さんが25歳だったのだから、この人の感じから同世代に決まっている。ひと回り近い違いは犯罪だ。
「3ヶ月。それでもお互いが一緒にいたいと思えたら、真剣交際しましょう」
「勝手に決めないでください!」
「僕はもう恋愛とか、面倒なんですよ。気持ちの試し合いはもういやなんです。その余力も持ち合わせていない。そう言ってしまったら真中さんに失礼かもしれませんが、ただ生活の中で一人ではできない安心や幸せを感じられたらいいなと思っています」
勝手に話が進んでいく、誰彼構わないプロポーズに正直言って引く。10年独り身を甘く見ないでいただきたい。ただ、失礼という感情は持ち合わせているらしい。
そもそもあの連日の復縁泣き付き電話の嵐はなんだったんだ。能天気な言い回しについていけない。
先ほどから、玄関横の棚に肘を付いて話しているのも気に入らない。
「考えておいてくださいね。では」
そう言って、ひらひらと手を振って玄関から出て行った。何を考えろと言うのだろうか、運命の出逢いと言うのならせめてもっと普通の人が良かった。
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