1.無い袖は振らない。

16/17
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「なんで……」 「なんでってあんな不安そうな顔されたら嫌でも気付くでしょう? 玄関先でもいいので、お話ししませんか? 外だと反響してしまうので」 「いやあの……あまり綺麗じゃなく……て」  玄関に鎮座する資源ごみを見つめる。  返事も聞かず玄関に入った彼を扉が追うように閉まって、激しい音がした。彼はペットボトルに視線を落としたまま気にした様子もない。 「え、もしかして、窓あいてませんか?」  不安が過ぎる。 「うそ開けっぱなし?」 「ここにいますから見てきてください」 「あ、あの……誰かいたらすぐにきてくださいね」 「えっと誰かって、強盗とかそういう?」 「は、はい……」 「俺が見てきましょうか?」  少し笑われたような気配につい、意固地になる。 「大丈夫です! いってきます!」 「行ってらっしゃい」  ひらひらと、廊下を歩き出した私に手を振ってくる。    廊下を突っ切り、リビングに続く扉を開けて閉める。電気をつけると、盛大にカーテンがベールのように揺れていた。  周りを見渡し、人がいない事を確認する。  一旦離リビングから出ると、トイレとお風呂も確認して戻る。 「で、大丈夫でした?」 「はい、人はいませんでした。でも開いてました」 「真中さんって、真面目でちゃんとしていそうですけど、ちょっと抜けているんですね」 「え……抜けてますか?」  男性からそう言った言葉を言われたことがなかったから驚いた。大人しそうとか、つまらなそうとかそういう印象しか持たれたことはない。 「男を容易く部屋に入れてしまうとか、ダメですよ知らない人を入れちゃ。まあ僕が勝手に入ったんですけどね」  全く危険な雰囲気もなく言う。 「私なんかを襲うような人いませんから」 「幸せ遠のきますよそれ」 「そうかな」  すでに遠のきまくって、宇宙の彼方だ。  今日だってよく分からないことに巻き込まれているし、合コンもうまく行かなかった。 「無粋な質問とは分かってますけど、お付き合いされているカレは?」 「いませんけどなにか?」 「好きな人いないんですか?」 「いるように見えます?」  ついキツくなってしまう。半ば焼けだ。 「結婚願望は?」 「それは……わからないです。別に子供がすごくほしいわけじゃない。一人も快適で。でもときどき独りが寂しいって思ったり。ってなんの質問なんですか、貴方には関係な……」 「じゃあ、とりあえず、婚約者は続行しましょうか」  剛は思いついたようにパチンと指を鳴らした。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!