1.無い袖は振らない。

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 ホールに通されると、長方形の部屋に8人掛けの長机が壁際に付けられていて、壁を向く形で椅子が並べられている。反対側の壁際にも8人座れる長机と椅子が壁際を向いて並び、各席に番号札が立てかけられていた。通された出入り口すぐの席、1番と名札が置かれた場所に座る。隣同士、女性、男性と交互に座るのだろう。2人ずつ簡易的な間仕切りがある。右隣の男性1番はまだ来ていない。  そういえばと、サングラスの男性を探すが見当たらない。別の回だったのかなと胸を撫で下ろした。  依子は女性1番。由紀子は一つ挟んだ女性2番の場所に案内された。  机の上に置かれた、プロフィールカードと書かれた紙を記入する紙を軽く流し見る。 ・職業 ・料理を 好き 苦手だが作るのは好き 苦手 ・趣味 ・休日の過ごし方 ・自己PR  まず、職業は販売員と書く。  次に目を移し、料理の項目に愕然とする。  料理嫌いだし。女性の判断基準ってここ? と不平を言いたくなるが、自分が男性だったら、料理作れる女性がいいと思うものだし。  作るけど、苦手。っていう項目があればいいのにと、つい眉間に皺がよる。  ここは正直に書こう。嘘はつけないしと、苦手に丸をつける。  趣味は喫茶店巡り。休日の過ごし方は、寝る。いや、だめ、それはだめだよね……友達と食事・旅行にしよう。自己PRは、趣味の合う方と仲良く慣れたらなと思います。よろしくお願いします。と記入して、全体を確認する。  なんだか印象がない、ありきたりな内容だなと肩を落とす。こういう時、職業が美容系とか看護師とか、男性受けするものだったらなと実感する。  細身の優しいそうな男性が隣に座った。  確か、女性は32-40 男性は35-45だったはずだ。会釈をされたので、同じように返す。  先ほどの綺麗な人が、マイクを手に内容を紹介して、お互い隣の人とプロフィールカードを交換する。持ち時間は5分。 「はじめまして。よろしくお願いします」  内容を上から眺めて、なんと会話を繋げればいいかわからない。 「お料理、あまりされないんですか?」 「はい。苦手で」  苦手というか、この世からなくなって欲しいとさえ思ってます! は、いいとして……話が続かない……盛り上げないと! なにか話題、話題…… 「この間は、フーチャンプル作ったんですけど、麺がベチャベチャになってしまって」 「それは大変でしたね。僕も料理好きじゃないからわかります。作ろうとすること自体が偉いですよ」  とりあえずは、笑ってくれた!  けど、こんなマイナスな話し、あってる?  お互い苦手って……どうなの!?  会話に一生懸命で、相手の話が入ってこない。とりあえず、1番さんは自営業をされているらしい。料理を分かってくれた、優しい人。と、男性側が移動するまでに、自分専用に用意されたメモに書き残す。
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