誰かの為になりたかった話

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誰かの為になりたかった話

「ねぇねぇ美麗(みれい)ちゃん。 ここが分かんないんだけど、教えてくれないかな?」 「え、ここ? ここはね──」  彼女、如月美麗(きさらぎみれい)は優等生で通る少女だ。  容姿端麗、才色兼備。  誰かの為に身を粉にして働くことができる。  両親は医者で、普通の家庭よりも少し、いや大分裕福だったが、それを鼻にかけることもせず謙虚に生きる。  そんな非の打ち所の無い彼女は、通う高校でも生徒会長を務めていた。  誰からも好かれる彼女には、大切なものがあった。 「ただいまー 優也(ゆうや)、優也の好きなメロン買ってきたよ」 「姉ちゃん!お帰りなさい!」  そう声をかけると廊下の奥から1人の少年が車椅子に乗って近づいてくる。  如月優也(きさらぎゆうや)。  彼女の、何よりも大切な弟だ。 「優也、いい子にしてた?」  「もちろん!ちゃんと家で勉強してたよ!」 「さすが私の弟ね」  そう言って頭を撫でると優也は嬉しそうに顔を緩める。 「手洗ったらすぐ切ってあげるからね」 「はーい!」 優也は嬉しそうにリビングに向かう。 「あんまりはしゃぐと危ないよー」  美麗はそう言いつつも強く止めることはしない。 「優也、勉強はどう?わからない事はない?」  メロンを優也と食べながら美麗はそう尋ねる。  優也は生まれつき歩くことが困難で心臓も弱く、小学校に入学してすぐにそれが原因でいじめられていた。  それ以来、優也は学校に行かず家で勉強している。 「うん!姉ちゃんのお陰だね」 「ふふ。 でも、優也が頑張っているから、勉強も出来るんだよ?」  美麗は再び優也の頭を撫でた後優也を抱き締める。 「優也、優也はお姉ちゃんの大切な、自慢の弟だよ。 お姉ちゃんは、優也の為なら何だってするから。 だから、優也は安心して過ごしてね。 お姉ちゃんが、いつも優也を支えてあげるから」 「うん、姉ちゃん。 姉ちゃんも、俺の自慢の姉ちゃんだよ! 世界一の、俺だけの姉ちゃんだ!」 「ふふ、ありがとう そんな可愛い優也くんには、メロンをもう一切れプレゼント~!」  そう美麗が言うと優也は嬉しそうに目を輝かせる。 「やったー!」  こう言う所は、小さい頃から変わらずとても愛くるしいと美麗は思った。
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