誰かの為になりたかった話

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「おはようございます、如月先輩」 「おはよう。 今日もいい天気だね」  登校の最中、美麗は後ろから後輩に話しかけられる。 「はい! 先輩、その……」 「ん?なあに?」 「ちょっと、相談したい事があって……」 「そうなの?私でよければ相談に乗るよ?」 「本当ですか?じゃあ──」  美麗は後輩たちの悩みを聞きながら学校へと向かう。  学校に着く頃にはその後輩の悩みもすっかり解決していた。 「如月先輩!お話を聞いてくれてありがとうございました! 先輩のお陰で、とてもすっきりしました!」 「ふふ、それならよかった。 また何かあったら、私に相談してね」 「はい!」  後輩と別れ教室に向かうと、そこでは同級生たちが話し合っていた。 「おはよう、みんな。」 「あ、おはよう美麗~っ!」  クラスメイトの1人が美麗に走り寄ってくる。 「ねえ聞いて聞いて! ずっと気になってたOBの人に告白したら、OK貰えたの!!」 「そうなの?それは良かったね」 「美麗がアドバイスしてくれたお陰だよ~っ 本当にありがとう!」  そう言ってクラスメイトは美麗の手を掴みブンブン振る。 「お役に立てたのなら何よりだよ。 誰かの為に働くことが、私の幸せだからね」  そう言うと美麗はにっこりと微笑む。  それにつられて周りも微笑みながら1人が言う。 「は~っ、生徒会長様の言うことは違うね~っ」 「そんなこと無いよ。」 「ねぇ、私たちいつも美麗にばっか話聞いて貰ってるけど、美麗は何か悩み事無いの? 役に立てないかもだけど、話聞くくらいならできるよ?」  そうクラスメイトの1人が言ってくる。 「うーん。 そうは言っても、私は今の生活で十分幸せだからなぁ……」  ただ1つ、気にかかる事があるならば。  優也に、普通の人のように生活を送って欲しい事ぐらいだ。  しかし、それは美麗にも、クラスメイトにもどうすることはできない。  だから、美麗は口にすることはしなかった。 「そっか~ じゃ、美麗は『青い薔薇』とは無縁の人間だね」 「『青い薔薇』?」  聞き覚えの無い単語に美麗は首を傾げる。 「うん。最近話題の都市伝説みたいな物なんだけど、何でも願いを叶えて貰えるんだって。」 「何でも……」  美麗はボソリと呟く。 「ちょっと~、そんなこと美麗に言ったってしょうがないでしょ。」 「それで、私たちはどうやったら『青い薔薇』に行けるのか話してたんです」 「そうなんだ。 でも、噂にのめり込み過ぎてもダメだよ?」 「分かってるって」  そうクラスメイトが言ったと同時にチャイムがなり、会話はそこで終わる。  しかし、美麗は終始『青い薔薇』の事を考えていた。
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