episode.03

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episode.03

 毎月第一月曜日は委員会がある。今日はそれで帰るのがいつもより少し遅くなった。  といっても二十分ちょっとしか変わらないけど。  僕は図書委員だ。  委員会を聞かれて答えると、大体「あー、ぽいね」って言われる。  カースト上位軍団達は、大人しい奴らが、大体本好きって思ってるらしい。偏見が過ぎる。  堂々と言うことでもないと思うが、僕は別に本に関わる仕事がしたくて図書委員になった訳じゃない。  僕らの中学校では、前期か後期のどちらかに必ず委員会に入らなければならない。めんどい事は先にやっとこうと思った。  体育委員にはどうしてもなりたくなかった。体育の号令と、人数確認まではまだ良い。だけど、前に出て準備体操の進行をしなきゃいけないのが嫌で仕方ない。  体育委員は、他の人達にも同じ理由で不人気だから、じゃん負けで長く残ってたら強制的にそこに配役される。  だから、やりたい人がいなくて、なおかつ仕事が楽そうな図書委員に立候補した。  やる気も積極性もない図書委員だ。  委員長は眼鏡を掛けた、文学女子然とした人だった。  真面目なガリ勉なんだろうな、って思ったけど、もしかしたらそうでもないのかもしれない。もしかしたら漫画とゲームが大好きで、勉強なんかクソみてぇ、とか思ってて、周りからの偏見に苦しんでるのかも。  そう考えたら、ちょっと申し訳なくなった。  真面目そうって、ちょっと馬鹿にした自分が、凄く愚かに感じた。  周りからの偏見の辛さを、僕自身がよくよく知ってる筈なのに。  昼頃に小雨が降ったせいで、ちょっと湿気の多い通学路を歩く。  コンクリートに雨の跡が粒々の細かい模様を作っていた。  生温い空気に鬱屈した気分が募り、溜め息を吐く。  分厚く広がる野暮ったい雲は重そうで、憂鬱な曇天の暗い灰色が、この世の全てに思えてしまいそうだった。  中学二年の五月は暗くて、だけど真っ黒にもなりきれない、中途半端なグレーだった。
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