愚かな恋人

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これが、付き合い始めたきっかけと言えるのか。 一緒にいる時間が多くなった。 花純は自分の好きなマンガのことを一生懸命にしゃべった。 「自分ではね、こんな男の子いたらいいなぁって思ってたけど、絶対いないって思ってたのね。でも総史くんは、そうじゃないから」 「可愛いって思ってるのに、可愛いって言わない意味が分からないな」 「そ、そんなの、そんなの総史くんだけだよ~~~!」 「そう?」 花純は、明るくなっていった。 時々、家でハチ合わせても屈託ない顔をして笑っているのを見かけるようになった。 家まで送る帰り道、花純が僕を見た。 「また…なんで見てるの?」 「キレイになったなと思って」 「う、ま、また、そういう。うれしいけど…」 手を伸ばして、髪にふれた。 「キレイだし、可愛いし、どうしようかな」 花純が目をしばたかせた。 途方にくれたような顔で、こちらを見ている。 …そんな顔するなよな。 「優斗が好き?」 「え…あの、前は…憧れてたっていうか。だけど、今は総史くんといたい」 体を引き寄せた。 白い息が僕らを囲んだ。 かがんで、キスをした。 ちょっと軽すぎたか。 「もう一回、していい?」 「き、緊張…」 返事を待たずに、もう一度キスをした。 袖にかかる花純の手の重みが愛おしかった。 小さなアタマを自分の胸に抱き寄せた。 「花純、好き。正式に付き合って」 腕の中で、花純がうなずいた。
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