牛丼の材料

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 牛丼の匂いが漂ってきた。  珍しいな。ここのところ、あいつはほとんど肉を喰っていなかったのに。  あいつの食事係に任命されて一週間。緑のカードを見せるときは、野菜の日。そうしたら僕は裏の畑に野菜を採りに行く。  赤のカードを見せるときは、肉の日。そうしたら僕は小屋で獲物を絞めに行く。この作業は、何度やっても慣れない。  特に、赤のカードが二日続けて出されるとき、二日目の小屋に行く足取りは重い。一日一つ、絞めていくうちに僕の心も一日一つ、重くなる。      獲物の額に刻まれた番号が減っていくたび、僕の心は削られる。僕の時間も、削られる。  新入りの食事係が昨日入ってきた。今日の獲物の番号は、二番。  あいつは冷酷非道だ。  自分の食糧を働かせるのだから。    あいつには血も涙もない。  だから、食事にだけは困らないだろう。  人類が滅亡さえしなければ。  鏡を見ると、嫌でも目に入ってくる。額に刻まれた「1」の文字。
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