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悪徳露天商の一件が、私の記憶の中でも風化した頃。
大学の友人から頼まれて――「女子の人数が足りないの!」と言われて――、柄にもなく合コンに参加したのだが……。その自己紹介の場で、目の前に座った男が、驚くべきセリフを言い放った。
「うん、時々言われるよ。グループKのタカシに似ている、って」
私は目を丸くしそうになるが、グッと我慢。平静を取り繕いながら、まじまじと彼の顔を観察する。
瞳と髪型、顔の輪郭には、確かに少しだけ、タカシくんの雰囲気が漂っていた。でも鼻や口は、パーツも配置も、タカシくんとは似ても似つかない!
この程度で「似ている」と自負するのも、それを武器にして女性を口説こうとするのも、タカシくんに対する冒涜だった。
存在そのものが許されない大罪人であり、これまで始末してきた者たち以上の抹殺対象だ。
「もしかして、優子も彼のこと狙ってる?」
私の熱い視線に気づいたらしく、友人が揶揄いの言葉をかけてきた。
一瞬ドキッとするが、彼女はヘラヘラした笑顔を浮かべている。私のような真剣さは見られないから、別の意味の『狙ってる』に過ぎないのだろう。
(「私の推し活は本物志向」完)
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