8人が本棚に入れています
本棚に追加
「アンナさんアンナさん!どうでした?カップの数、足りました?」
「……どういう意味?」
「だって、聞きましたよ!ユークアルダ様の初めてのお泊りでは、カップとソーサーを五セット準備したとか…!」
タマラの一言に、がちゃんと、アンナはトレイをテーブルの上に置いた。
アンナの苦い記憶。
現王がまだ王子だった頃、アンナは彼のお茶係だった。ある朝、まさか王子のベッドに女性が四人もいるとは誰が予想しただろうか。しかも女性のうち一人はアンナの姉だったのだから彼女のショックは計り知れない。
追加のカップを準備した時のあの気まずさは今でも覚えている。
そのことから、今朝、王子の部屋にいる女性の人数に事前情報と差異があり、昔と同じことが起きた場合…お茶係の召使い、今回の場合タマラだが、彼女にとってショックを与えるかもしれない。そこでアンナに話が回ってきたのだ。一度はその修羅場を知っている彼女であればどういう状況でも大丈夫だろうと。
今回は結果として杞憂に終わったのだが。
「……うーん、さすが白海史上最強の女性キラーと言われるユークアルダ様は違いますね~!ラレイル様はその記録更新はできなかったんですね~」
興奮さめやらぬ様子のタマラを見る。
(私にしかできない……?)
タマラならどんな場面に遭遇しても大丈夫だったのではと呆れるアンナなのだった。
《The End》
最初のコメントを投稿しよう!