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「……分かりました。確かにそれは、私にしかできませんね」
静かな夜のことだ。
寝る直前に呼び出され聞かされたのは、今夜、この国の王子の身に起きているある出来事についてだった。それに関連する明日の朝の仕事を任され、アンナは静かに頷いた。シンプルな部屋着にストールを羽織っただけのリラックスした格好に、この国の国民特有の綺麗なプラチナホワイトの髪はふんわりと背中へ流されている。
「アンナ、頼んでおいて何だが…本当にいいのか?まぁ大丈夫だとは思うが、万が一あの時みたいなことが起きないとも限らないし……」
テーブルの向かい側に座っている男は心配そうな表情だ。この遅い時間のため伸びてきたヒゲのおかげでよりくたびれ、やつれて見える。
アンナは彼の気遣いを嬉しく思い、微笑んだ。彼女と同じ31歳の目の前の男は王子の側近で彼女よりも偉い立場にあるが、共に同時期に入城した、いわゆる同期。お互い助け合ってきた仲だ。
「大丈夫ですよ、エンゾ。あの時はまだ私も初々しい少女でしたが……あれ以来それなりに場数を踏んできましたから。それに、最初のインパクトがとても強かったので、ちょっとやそっとじゃあ驚きません」
「それならまぁ…頼んだぞ」
「ええ。それに、今回、初めてでしょう?嬉しいことじゃありませんか」
「ははっ、そうかもな」
二人はにやっと笑い、それぞれの部屋へ帰って行った。
明日の朝は忙しくなりそうだ。
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