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「お兄ちゃん、絋くん、私ちょっと先に入ってお母さんに声掛けてくるから」
「分かった。すぐ行くよ」
絋亮が車から降りると、荷物を手に取って玄関に向かう。
「来た来た。薄情なお兄ちゃんがご帰宅しはったわ」
「そんな出迎えあるかよ」
悠仁が玄関に入るなり、ケラケラ笑いながらおかえりと面白がる母は、すぐに絋亮に気付いて目を丸くする。
「いやぁまたえらい男前やね、お兄ちゃん見直したわ。ふふ、初めまして。遠いところよう来てくれたね。とりあえず上がってちょうだい。散らかってるけど」
そうやって人好きする笑顔で笑う悠仁の母に、絋亮がどこかで会った気がするのは、真彩に似ているからかも知れない。
「初めまして、秋塚絋亮です。本日はお言葉に甘えて、突然お邪魔して申し訳ありません」
「いややわ、そんな気ぃ遣わんと。実家や思てもっとリラックスしたらええよ」
絋亮の肩をポンと叩くと、悠仁の母は満面の笑みで唐揚げは好きかとマイペースに声を掛けている。
「いや、馴れ馴れしすぎるだろ」
「なんやのお兄ちゃん馴れ馴れしいて。こんな綺麗な顔した男前な子、話すだけで気分ええやんか。なあ、絋亮くん」
「え、あ……あはは」
「ほら見ろ、絋亮が困ってるだろ」
広い玄関ホールを抜けてリビングに移動すると、これまたスラリと背の高い紳士が笑顔で出迎える。
「遠いところようこそ。脚の具合いは平気かい?」
「初めまして、秋塚絋亮です。お気遣いありがとうございます。本日はお言葉に甘えて急にお邪魔して申し訳ありません」
「ご丁寧にありがとう。とりあえず座ってゆっくりしてください。悠仁ほら、秋塚くん座らせてあげなさい」
「絋亮、とりあえず座ろうか」
ソファーに腰掛けると、お茶と茶菓子を持って母と真彩がリビングにやってきた。
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