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39-1
胸焼けするほど夕飯をしっかり食べて、笑いの絶えない時間を過ごすと、そろそろお暇しようかと重くなった腰を上げた。
庭に出て名残惜しそうに見送る家族に手を振りながら友川家を後にすると、悠仁と絋亮は散歩がてら歩いてホテルに向かう。
「さすがに二日も居たら濃かっただろ」
「楽しかったよ」
「それ本気で言ってる?」
「うん。母さんの墓参りに行きたくなった」
「そっか。じゃあ今度は絋亮の親父さんに声掛けて3人で行こうか」
「ふふ、ありがとう」
絋亮の脚を気遣いながら、15分ほど歩いて地下鉄で移動すると、コンビニで適当にお酒とツマミを買ってホテルにチェックインする。
ビールで乾杯してたわいない話をしながら、悠仁の実家で撮った写真を眺めてしばらく過ごす。
一気に色々なことが起きて、二人きりでは昇華出来なかったかも知れないが、旅行や実家への帰省で、他の誰かと過ごしたことが功を奏したのか、絋亮の気も随分と紛れたようで、結果的には良かったのかも知れない。
二人で風呂に入って貪るように互いを求め合うと、その後は身体を拭くのもおざなりに、しっとり濡れたままベッドの中でも意識が飛ぶまで何度も愛し合った。
「ゴム無くなるとか、どんだけだよ」
「コンビニで買えば良かったね」
「それがあったらまだしてたのか」
「あはは。どうだろう」
事件があって恐怖心が膨らんでいた様子の絋亮だったが、悠仁と肌を合わせることへの抵抗はなくなったように思う。でなければここまで愛し合うこともないだろう。
甘えるように悠仁に抱きつきながら、絋亮はいつの間にか規則的な寝息を立て始める。
「おやすみ」
額にキスをして悠仁も目を閉じて、こんなに穏やかな過ごし方がずっと続けば良いと思う。
一緒に暮らすことで、想像もつかないことは起こるかも知れない。それに、絋亮がヘドニス子として活動を続けるのであれば、あの事件のような不測の事態が全く起こらないとも限らない。
絋亮のパートナーとして、自分にはなにが出来るか考えるが、悠仁はゲイであることを自発的にオープンにするつもりがないので、色々と手詰まりな状況は生まれると思う。
「それでも俺はお前を愛してるよ」
隣で安心して眠る絋亮にそう呟いて、自分の中にこんなに人を好きになる感情があったことに苦笑いする。
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