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家に着くと、朝出た時と何一つ変わらない光景が広がっていた。
分かりきっていた冷たい空間。
加宮は鍵を閉めると、電気もつけずに真っ先に自分の部屋に向かい、ベットに倒れ込んだ。
今日はものすごく疲れた。
このまま寝たらまた夕飯を食べ損ねるな、と消えかかる意識の中でぼんやりと思う。
食べることは生きること。
時々、それを放棄してしまいたい時がある。
私という存在を、この世界から消してしまいたい...。
この不安定な気持ちは、この年代によくあることなのだろうか。
加宮自身も、時々自分が自分でないような、自分が何を考えているのか理解できない時がある。
衝動的で流動的な感情を持て余している。
ゆっくりと、睡魔に従いまぶたを閉じる。
寝て全てを忘れてしまおう。
きっと、それが最善だから。
加宮の頬を温かな風がそっと撫でていく。
赤色に染った空には、月が異様なまでに光を放っていた。
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