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「それにしても!いやー、久しぶりのニッポンかと思ったら、こんな高校生にお会いできるなんて!きっと、ニッポンの高校生で選ばれた、ジョシは君が初めてだと思いますヨ!」
胡散臭い、拙いのか流暢なのかわからない日本語を使いながら話すその内容はまったくもって理解できない。
いや、加宮に理解させる気が全くないのだろう。
まあ、夢であるから理解する必要はないだろう、と、ぼんやりとした他人事の加宮に、支配人はずいっと迫ってくる。
「で、どうします?参加しますか?参加しますよね!こんな機会は二度とないです、参加しないと、ですよ」
「参加って…」
なんとも危険な匂いが凄まじい。
悪徳商法にしては手口が杜撰すぎる。
もっとうまく、いい感じの話にして言いくるめるべきだろう。
でも、何度もいうがこれは夢だ。
現実に埋もれすぎたからといって、思考までもががんじがらめじゃ面白くない。
夢ぐらい、自由に楽しもうじゃないか。
「ねえ、おじ」と言いかけたところで、鋭い視線を向けられる。
「支配人、ですよ」
設定は重要らしい。
「失礼しました、支配人。」
支配人、は満足そうにニンマリと不気味に白い歯を覗かせる。
「なんですか?1596番の君。」
自分の呼び方を固執して、相手は番号呼びなんてなんてナンセンスなんだろうか。
ぐっとこみ上げる文句をのみこむ。
「参加したら、私はどうなるの?私のメリットは?」
支配人は綺麗に伸ばされた髭を撫でながら、待ってましたと言わんばかりに目を細める。
「あなたが、失った過去を取り戻せるかもしれません。または、あなたの望む未来をお与えできるかと。」
私が失った過去…、私の望む未来…。
私は思わず息を飲む。
なんて、私に都合のいい夢なんだろうか。
いや、夢だからだろう。
私が追い求めてる結果がそこにはある気がした。
夢でくらい、望んだ世界を手に入れてもいいんじゃないだろうか。
「わかった。やるわ。」
そうこなくっちゃ、そう口を動かし支配人は不敵な笑みを浮かべる。
次の瞬間、眩い光が加宮を包み込む。
耐えきれず目を閉じる。
遠くで支配人が何かをつぶやく声が聞こえた気がしたが、その時にはもう加宮の意識はなくなっていた。
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