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「…っ」
その鋭さに息を飲んでいると、秋良さんが私の上に跨ってきた。
「諦めなよ。男一人手放せばあんたも、その幼なじみも傷付かずに済む。簡単なことだろ?」
…頭では分かってる。
確かに私が颯夏を離せば、話は簡単に片付く。
でも…────
「…そんな…ことじゃないの…」
簡単に手を離すことなんてできない。
好きだから、できない。
離してほしくないから、できない。
「…好きなの…」
ただ、その気持ち一つだけなのに。
「チッ…。ホント頭の悪い女ね。秋良、こいつに自分の状況分からせてやってよ!」
苛立った琳歌さんに言われ、秋良さんが私にスマホを見せてきた。
「! な、に……」
そこには、冬弥が複数の男に殴られたり蹴られたりしている光景が映し出されている。
「向こうにもこっちと繋がってる。この意味、分かるよな?」
「なんで…っ」
「あんたが抵抗したからだ」
「!」
「あんたがそうやって逃げようとすれば、被害は増えるだけだ」
画面の向こうで、どんどん冬弥がぼろぼろになっていく。
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