2.関係、微かな疑心

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それは冬弥だった。 「颯夏、話がある」 切れ長の目が、じっと見下ろしている。 「ここでできない話?」 スマホから目を離さずに尋ねると、返事の代わりに冬弥がスマホを取り上げた。 「…はいはい、行けばいいんだろ」 冬弥の後について行く間際、菜月が陽愛と話しているのが見えた。 (どうせ当てつけみたいに惚気話聞かされてんだろうな。可哀想に…) 救ってやりたい気持ちはあるが、抑えてやめた。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 屋上に着いて、冬弥が振り返る。 「お前、陽愛に何をした?」 開口一番がそれかよ、と言ってやりたくなったけど、敢えて言わないことにした。 「何って?」 「今朝俺と菜月に、今日は先に行くとメッセージが来た。普段なら俺たちと登下校する陽愛が、急にそんなことを言うなんて珍しいだろ?」 「日直だったら早く来るなんて普通じゃねぇの?」 「今日の日直は陽愛じゃないから言ってんだ」 「じゃあなんか別の用事あったんだろ?女子の用事なんて色々あんだからオレに訊くなよ」 「昨日の事と何か関係があるんじゃないのか?」 ふわっと吹いた風が間を駆け抜けた。 「…へぇ?」 わざと不敵な笑みを見せてやる。
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