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……夢じゃなかった……!!!!!
「顔、超真っ赤。陽愛かーわい♡」
「っな…な、なに、からかって…!」
ドキドキバクバクと心臓を鳴らしながら、颯夏と距離を取る。
「っわ…私、先行くから!ついて来ないで!」
とにかく逃げたくなって、走る。
「えー、つれないこと言うなよ。オレら幼なじみじゃん」
私の気も知らずに、颯夏は追いかけてきた。
「っお…幼なじみが普通、恋人じゃないのにあんな事する?!」
颯夏が突然私の腕を掴んだ。
「恋人ならいいの?」
「な…」
振り返った私を、颯夏がじっと見つめる。
「い…いいとか、そういう事じゃなくて…」
手を振り払うつもりがさらに強く掴まれた。
その強さに、心臓が早鐘を打つ。
「じゃあ何?ちゃんと言ってくんなきゃ分かんない」
「っ…酷いよ!私が冬弥を好きだって知ってるくせに、何であんなこと…っ!」
「好きだから」
颯夏の答えは、真っ直ぐだった。
「好きじゃなきゃ、あんな事しない。陽愛が冬弥を好きなように、オレだって陽愛のことが好きだ」
「っ…」
「分かってるよ、酷いことしてるって。でもオレは後悔してないから」
颯夏は私から手を離すと、先に歩いて行ってしまった。
「……何よ、それ…。そんなの、酷い…」
昨日のことを忘れろ、って言われた方がまだマシだった。
あんなに優しく、甘く溶かすように触れられたら、忘れたくても忘れられない。
───『陽愛』───
あんな声で、名前を呼ばないで。
あんな目で、私を見つめないで。
冬弥のことが好きなのに、颯夏のせいで頭の中が颯夏に支配されてる────…。
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