2.関係、微かな疑心

7/8
前へ
/193ページ
次へ
──颯夏って、女の子に抱き付かれててもあんな平気な人だなんて…! 私のこと好きっていうの、嘘なんじゃないかな?! そういうの、知りたくなかったんですけど! ……はっ!! 妙に昨日手馴れてたのは、もしかして、もしかしなくてもそういう事…?! うわぁあぁ……嘘でしょ…!!!?!?! 一人で怒ったり落ち込んだりしていると。 「ねぇ、陽愛。陽愛は好きな人いないの?」 菜月がそんなことを尋ねてきた。 「えっ…?」 「だーかーらぁ〜、好きな人!いないの?」 無邪気な笑顔で菜月は私に笑いかける。 「いたら全力で協力するよ!」 「あ、ありがとう…」 なんて答えればいいのか分からなかった。 私の好きな人は冬弥だから──なんて言って、優しい菜月を傷付けたくない。 お似合いの二人だし両思いなのだから、私が亀裂を入れるような真似をしてはダメだ。 「でも今は…好きな人は、いないよ」 好きな人なんて、作るんじゃなかった。 勝手に恋して、勝手に失恋して、勝手に傷付くくらいなら、なんで好きになんかなってしまったんだろう…。
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加