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繰り広げられる光景から、目を逸らす。
ただ部屋に響くのは彼女の快楽に喘ぐ声と、椅子の軋む音。
どれだけ目をきつく瞑っても、現実は私を逃れさせてはくれない。
私を助けてくれる人は、ここにいない──。
ただ唇を噛み締めて、壁を見つめて、耐える。
だって彼女たちの方を見ていれば、きっと気がおかしくなる。
「ねぇ秋良っ、あんたもその子とすればぁ?」
快感の吐息混じりに琳歌さんが尋ねた。
「…は?」
何を言うのかと思って、思わず琳歌さんと黒シャツの彼…秋良さんを交互に見る。
彼はちらりと私を見下ろしてきた。
「だって見てるだけじゃ、発散にもならないでしょ?」
「……ははっ。どこまでもひでぇ女」
黒シャツの彼が、ベッドに上がってくる。
「!」
ハッとして、私は彼を蹴ろうともう片方の足を振り上げる。
けれどそれも受け止められ、虚しい抵抗に終わった。
「おっと。勇ましいな、あんた。さっきまで大人しかったのに」
「やめて!触んないで!」
「どうせ、あの男とはやる事やってんだろ?同じことじゃん」
「あなた、頭おかしいわよ!どうかしてる…!」
「そうだな。じゃなきゃ、こんな頭のおかしい事してないもんな?」
私に抵抗させないつもりで、秋良さんがナイフを見せてくる。
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