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──「おかえり、陽愛」
これからデートだという二人を見送って家に帰ると、隣に住んでいる幼なじみの小野瀬颯夏が来ていた。
「颯夏…来てたんだ」
「おう、菜月が陽愛と冬弥に話あるって言うから先帰ってたんだよ。んで、お前の家来たら、おばさんがまだ陽愛帰ってきてないから上がって待ってろって」
「…そう…」
鞄を机の横に掛けてからベッドに倒れ込む。
「どうした?なんか元気なくね?」
「……」
「おーい、どした?お腹痛いのか?」
颯夏が心配そうに頭を撫でてくる。
その手が優しくて、泣きたくなった私はこのまま颯夏に甘えて全て吐き出そうと思った。
「…菜月が、冬弥と付き合った、って…」
「は」
颯夏が一瞬目を丸くする。
「は…?えぇええぇ?!ま、マジか!菜月のやつ、冬弥の事好きだったのかよ!」
「颯夏ちょっと声大きい」
ゆっくりと起き上がって、傍にあったティッシュで出てきた涙を拭う。
「悪ぃ、でもびっくりしたわ。菜月にそんな素振りなかったから、ちょっと意外かも…」
「……はーぁあ…なんでかなぁ…」
「ん?」
「私だって…」
もっと早く好きって言ってれば。
もっと早く行動していれば。
なにか変わってたのかもしれないのに。
「陽愛…?」
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