1.涙の痛み

4/8
前へ
/193ページ
次へ
瞬間、私の唇が颯夏の唇によって塞がれていた。 「っ」 驚きのあまり涙が止まる。 「…落ち着け、陽愛」 ゆっくり唇を離して、優しく颯夏が呟く。 「お前の気持ちも分からなくはない。でも、こうなってしまった以上、もうどうにもならないだろ」 「りつ、か……いま…」 「そうでもしねーと、お前止まらなさそうだろ」 颯夏と…キスしてしまった…。 理解した途端、顔に一気に熱が集中する。 「陽愛」 呼ばれてハッとして顔を上げると、颯夏が至近距離にいた。 「っな…」 思わず驚いて後退ると、壁にどんと背中がぶつかった。 それを追いかけるように、颯夏が距離を詰める。 「…な、なに颯夏?真剣な顔しちゃって…」 真剣な眼差しの颯夏から逃げるように、慌ててベッドから降りる。 「陽愛」 腕を掴まれたかと思うと、後ろから抱き締められた。 「! り…颯夏?!」 「オレ、お前に付け込もうとしてる。お前が冬弥と付き合えなくて落ち込んでる今がチャンスだって」 「な…っ?!」 くるりと後ろを振り向かされたかと思うと、再び唇をキスで塞がれる。
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加