1.涙の痛み

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脱いだブレザーをハンガーにかけ、鞄を机の上に置き、部屋の電気を点ける前にカーテンに手を伸ばして気付いた。 隣の家…陽愛の部屋の電気が点いていない。 いつもならもう閉まってるはずなのに、薄いカーテンしか閉まってないなんて変だ── そんな違和感を感じていると、陽愛の部屋からベランダに誰かが出てきた。 薄ら暗くて一瞬誰だか分からなかったが、僅かに栗色の髪が見えて颯夏だと分かった。 「颯夏?お前なんで…」 ベランダに出ると、なぜか颯夏はシャツのボタンを留めておらず、はだけた状態で立っていた。 「冬弥、帰ってたのか」 手に持っていたペットボトルの水を飲んで、颯夏が笑う。 「陽愛から聞いたよ。お前、菜月と付き合ったって?」 「…あぁ」 「おめでとう。知らなかったよ、お前が菜月を好きだなんてさ」 「……。それより颯夏、お前なんで陽愛の部屋から出てきた?」 颯夏が意味深にニヤッと笑った気がした。 「何にもないよ。菜月と幸せにな」 「あ、おい、待て颯夏!」 颯夏は聞く耳を持たず、陽愛の部屋へと戻って行った。 (なんだ、颯夏の奴……?) side/冬弥 end
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