79人が本棚に入れています
本棚に追加
脱いだブレザーをハンガーにかけ、鞄を机の上に置き、部屋の電気を点ける前にカーテンに手を伸ばして気付いた。
隣の家…陽愛の部屋の電気が点いていない。
いつもならもう閉まってるはずなのに、薄いカーテンしか閉まってないなんて変だ──
そんな違和感を感じていると、陽愛の部屋からベランダに誰かが出てきた。
薄ら暗くて一瞬誰だか分からなかったが、僅かに栗色の髪が見えて颯夏だと分かった。
「颯夏?お前なんで…」
ベランダに出ると、なぜか颯夏はシャツのボタンを留めておらず、はだけた状態で立っていた。
「冬弥、帰ってたのか」
手に持っていたペットボトルの水を飲んで、颯夏が笑う。
「陽愛から聞いたよ。お前、菜月と付き合ったって?」
「…あぁ」
「おめでとう。知らなかったよ、お前が菜月を好きだなんてさ」
「……。それより颯夏、お前なんで陽愛の部屋から出てきた?」
颯夏が意味深にニヤッと笑った気がした。
「何にもないよ。菜月と幸せにな」
「あ、おい、待て颯夏!」
颯夏は聞く耳を持たず、陽愛の部屋へと戻って行った。
(なんだ、颯夏の奴……?)
side/冬弥 end
最初のコメントを投稿しよう!