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2.関係、微かな疑心
「行ってきまーす…」
出来れば誰とも顔合わせずに済むように朝早く家を出ると、なぜか門のところに颯夏が立っていた。
昨夜のことを思い出して、心臓がドクンと鳴る。
「陽愛、おはよ」
「あ…お、おはよ…」
「そういや、今日英語の小テストあるよなー。オレ勉強してねーからやばいわ」
さりげなく昨日のことを避けるように、颯夏が話題を振ってくれる。
──『陽愛』───
知らなかった。
颯夏があんなに甘い声で呼ぶなんて。
それに、やけに手馴れていた。
まるで私を甘く溶かすみたいで…。
初めは恐怖でしかなかったのに、途中からは何も考えられなくなった。
それぐらい、颯夏は…。
「ひーな?」
気付くと颯夏が私の顔を覗き込んでいた。
「ぅわ?!」
「おお、帰ってきた。どうした?ぼんやりして」
昨日のことなんて嘘だったかのような颯夏の様子に、私一人が振り回されている気がする。
もしかしたら、昨日のことは夢だっ…
「もしかして昨日のコト…思い出してた?」
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