2.関係、微かな疑心

1/8
前へ
/193ページ
次へ

2.関係、微かな疑心

「行ってきまーす…」 出来れば誰とも顔合わせずに済むように朝早く家を出ると、なぜか門のところに颯夏が立っていた。 昨夜のことを思い出して、心臓がドクンと鳴る。 「陽愛、おはよ」 「あ…お、おはよ…」 「そういや、今日英語の小テストあるよなー。オレ勉強してねーからやばいわ」 さりげなく昨日のことを避けるように、颯夏が話題を振ってくれる。 ──『陽愛』─── 知らなかった。 颯夏があんなに甘い声で呼ぶなんて。 それに、やけに手馴れていた。 まるで私を甘く溶かすみたいで…。 初めは恐怖でしかなかったのに、途中からは何も考えられなくなった。 それぐらい、颯夏は…。 「ひーな?」 気付くと颯夏が私の顔を覗き込んでいた。 「ぅわ?!」 「おお、帰ってきた。どうした?ぼんやりして」 昨日のことなんて嘘だったかのような颯夏の様子に、私一人が振り回されている気がする。 もしかしたら、昨日のことは夢だっ… 「もしかして昨日のコト…思い出してた?」
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加