望んだ色で咲くために。

1/6
前へ
/6ページ
次へ

望んだ色で咲くために。

 二年生の生活科の授業。チューリップの球根を貰った僕が、植える前に家に一度持って帰って来たのにはちゃんとした理由があった。  この球根を、誰よりも大きく、カッコよく、綺麗に、可愛く育ててやりたいと思ったからである。というわけで。 「チューリップの花が咲く魔法教えて!」 「何でそうなるんじゃ」  自室のベットの上。枕の上にちょこんと座って、呆れた声を出したのは――手のひらサイズの、おじいさんみたいな姿をした生き物だった。背中には、キラキラと光るちょうちょみたいな羽根がくっついている。妖精ホビットの一人、クルベットじいさんだった。  この世界には、妖精がいる。  ただし、妖精が見えるのは、魔法使いになる素質を持ったほんの一握りの人間だけ。多くの人間は、魔法なんて科学に圧されて大昔に滅んだと思っているが、実際は今でも見えないところでたくさんの魔法使いが活躍しているらしいのだ。予知をして政治家を説得したり、時にミサイルから国を守るための働きをしたり、場合によっては魔法で暗殺を行う魔法使いもいるのだとか。  クルベットじいさんは、そんな魔法使いに魔法を授ける精霊だという。  魔法使いが魔法を使えるようになるには、精霊との契約が不可欠。精霊が正しく指導をすることで、人は魔法の力を得て正しき魔女・魔術師へと成長するのだそうだ。  で、小学校二年生の僕も、その魔法使いの素質ありと認められたので、クルベットじいさんが家にやってきたというわけなのだが。 『ちょいと、お前さんの家に早く着すぎてしまったようじゃなー。魔法を本格的に教えるのは、お前さんがもうちょっと大きくなってからにするわい』  これである。  僕はちょっと風を吹かせる魔法とか、ちょっとものを浮かせる魔法(しかも、紙切れを浮かせるレベルが精々。それ以上の重さはムリ)くらいしか教わっていない。ほとんどお預けの状態である。僕としては、魔法の力に興味津々だし、もっと早く強力な魔法を教えて欲しくて仕方ないというのに。まだ子供だから、なんて酷すぎるじゃないか。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加