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これでも僕は学校のテストじゃいつも百点ばっかり取っているし、クラスでは断トツで背が大きいし、知らない人からはもっとお兄さんだと勘違いされることがとても多いのだ。クラスのみんなよりずっと知識も豊富で、大人っぽいと思っている。そんな僕なら、まだ八歳だろうが魔法を教わるのに充分ではないのだろうか。漢字は得意だから、大人が読むようなちょっと難しい本だって読めるというのに。
「ねえ、いいでしょ。生活科の授業で、チューリップの観察やるんだよ。これをみんなより早く、きれーに咲かせるくらい魔法ならカンタンでしょ?なんでダメなのさ!」
僕が球根を握ってぎゅーっと彼の目の前に突き出すと。クルベットじいさんはめちゃくちゃ迷惑そうに顔を背けた。
「そんなもん、普通に育てればいいじゃろうが。何で魔法に頼らないといけないんじゃ」
「だって悔しいんだもん!ケンちゃんたち、僕なんかじゃ絶対チューリップも綺麗に咲かせられないって笑うんだ。だから、誰が一番早く芽を出すか、誰が一番綺麗なお花を咲かせるかで競争してるんだ。あんな乱暴なやつに、絶対負けたくないんだよ!」
「アホくさ」
呆れてクルベットじいさんは、すすすす、と枕の後ろに隠れてしまった。
「魔法で育てたら生活科の授業にもならんじゃろ。何でチューリップの花を育てるなんて授業があるのか、お前さんわかっとるのか?駄目だ駄目だ、魔法なんかに頼らず普通に育てるんじゃ」
「……むう」
そういう言い方をするということは、花を咲かせる魔法が存在していることは間違いないのだろう。僕はジト眼になりつつ、本棚の方へ視線をやった。
僕は知っているのだ。クルベットじいさんが本棚の後ろに、魔法を教えるための分厚い教本を隠していることを。
――いいもんね。教えてくれないなら自分で咲かせてやるんだから!
クルベットじいさんは毎日同じ時間に散歩に行く。その時がチャンスだ。
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