望んだ色で咲くために。

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 ***  結論を言うなら。チューリップを咲かせる魔法、は滅茶苦茶簡単だった。ほんの少し、チューリップに流れる魔力を強化して、成長を早くしてやるだけでいいのだから。  それに、魔力の流れを調節すれば、花の形状や色を変えることだってできるという。僕は舞い上がっていた。本当は赤いのチューリップが良かったのに、赤はケンちゃん達に取られてしまって、ジャンケンで負けた僕は白いチューリップを咲かせることになってしまったのだから。どうせなら、魔法を使って赤にチェンジしてやろうと考えたのである。  十月。少し肌寒くなってきたこの時期。  僕達は授業で、それぞれの鉢植えに土を盛り、球根を植えたのだった。ケンちゃんとその友達はわざわざ僕のところに来て、僕の手元を覗きこんでニヤニヤと笑うのである。 「新橋のチューリップ、芽なんか出なかったりして。一人だけ育たなかったらお笑いだよなー」 「あるんじゃねー?成績いいからっていっつもお高く止まってさ。人をバカにしてばっかりなやつなんかのところじゃ、チューリップも咲きたくないだろーよ」 「違いねー!あははははは」 「……バカになんかしてないつうの」  そもそも、自分がバカにしてるんじゃなくて、宿題もまともにやろうとしないお前らがバカなだけじゃん、と言いたい。言ったらまた面倒になるので黙っているが。  彼等はきっと、僕が魔法使いに選ばれたことどころか、この世界の裏側に魔法の文化があることさえ知らないのだろう。きっとクルベットじいさんの姿さえ見えないに違いない。選ばれなかった人間の、なんと可哀想でみじめなことか! ――今に見てろよ、バーカ。  僕は肥料を混ぜた土に水をあげながら、こっそりと魔法の言葉を唱えたのだ。 ――春になる前に咲かせて、あっと驚かせてやるんだからよ!
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