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・・あなた、元気そうでよかった。いいお友達にも囲まれて・・
突然体が動いて起き上がると、妻が布団の横に座っていた。
そして自分の手を取って、
・・私はいつでもあなたのそばにいますから。
ちゃんと見守っていますから・・
そう言って微笑んだ直後に、ゆらゆらと陽炎のように
その体が薄らいでいって、煙のように消えてなくなっていった、
のだと思う、とそこまでが三島さんが覚えている光景だったのだそうだ。
その後は、眠ってしまったのかはたまた夢から覚めたのか、
気が付いた時にはカーテンの隙間から薄明りが差し込む時間になっていた、
と三島さんは大きく肩で息をした。
「夢を見たんじゃないかと言われればそんな気もするし、でも
僕の手を握った彼女のぬくもりっていうのは伝わってきたんだよねえ」
三島さんは自身の手の甲を撫でながら
その時の感触を思い起こさせているように、尚樹には見えた。
あれは夢なんかじゃないよな、本当に会いにきてくれたんだよな、と
亡き妻に語り掛けているのではないか。
「まあ、夢だったにしても、あんなにリアリティある夢は
一度も見たことが無かったからね、すごく嬉しかったよ」
にっこり微笑んだ三島さん。
手にしたグラスの氷がすっかり溶けているのに気が付いて、
大きなロックアイスをトングで入れた。
それから日本酒を足し、自分も小さめのグラスに同じ日本酒を注いてから、
三島さんのグラスにカチンと当てた。
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