裏路地で会った男

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裏路地で会った男

 師走前の、年内最後の定休日には業務スーパーで大量の買い物をする。  そのほとんどは店で使うものだが、 自宅の食材も買ってまとめて店に配達してもらう。  手にはほとんど荷物が無いおかげで、商店街から飲兵衛横丁へと 散歩がてらそぞろ歩く。赤ちょうちんやら焼鳥を焼く煙やらが、 通り抜ける尚樹に手を振っているようだった。  その一角の、薄暗い路地、 ジャズのライブハウスがあるだけの通りにさしかかると、 オレンジ色の明かりを放つ裸電球の外灯の下に、 一人の男がたたずんでいるのが見えた。  何をするでもなくただ突っ立っている男。でも特に不振に思わなかった。 なぜなら、古いビルの二階にあるライブハウスから漏れ出る生演奏を、 店に入ることなく聞くことができるから、 こうした風景を目にした事は何度もあるからだ。
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