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クリスマスの日は、オープンしてから毎年
サービス価格の二千円ぽっきりデーと称してドリンク二杯とつまみ二皿というサービスを行っているバー・タイニーキャッスルには、
入れ代わり立ち代わりの客たちで開店してからずっと賑わいが続いている。
初めてイベントに参加した長澤夫妻は、あまりのにぎやかさに
興奮気味に常連仲間たちとお喋りに興じていた。
ここ一カ月ほど顔を見せなかったので、なにかあったのかと
少し心配していた尚樹だったが、歳の暮れというのは
誰でも忙しいものだからと、彼らに特に理由を聞いたりはしなかった。
ただ、買い出しの日の帰りに路地で会った男のことだけは聞いておきたくて、信彦と照美に話しかけるタイミングを見計らっていた。
「マスター、たまにはカクテルを飲んでみたいんですけど、
マスターお薦めのものをお願いしてもいいかしら?」
笑顔を引きずりながらカラのビールグラスを持って
尚樹の前にやってきた照美に、
「じゃあ、ヴィーナスってやつが素敵な女性へのおすすめなんで、是非」
そう言ってさっそくカクテルに使う酒の瓶を目の前に並べて見せる。
「まあ、お世辞付きのカクテルなんて、是非飲んでみたいわ」
「おっ、うまいこと言いますね、照美さん。
お世辞付きカクテルかぁ、今度使わせてもらいますよ」
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