裏路地で会った男

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「あ・・すいません、よく覚えていなくて。  急に声をかけられたんでビックリして、それでもまじまじと  顔をみたつもりなんですけどねぇ・・なんで思い出せないのかなぁ」  頭をひねって固まる尚樹と、カウンターを挟んで直立不動でいる 照美の様子が目に入ったらしく、毎度さんたちとお喋りしていた信彦が 二人の元へとやって来た。 「マスター、どうかしたんですか?  照美、なにかマスターを困らせる様な注文でもしたのかい?」  振り返った照美の表情からも、ただのおしゃべりではない事を感じ取って、   信彦が冗談を交えて少しわざとらしい笑顔を見せた。 「いえいえそうじゃないんです。照美さんにお聞きしておいて  俺の方が聞きたい事が曖昧になってしまって」  尚樹は照美に話した事を繰り返し、信彦にも話した。 すると照美と同じように一瞬表情を平たくした。  尚樹は感じ取った。  照美も信彦も、尚樹に声をかけてきた男にもちろん 心当たりはあるようだが、それ以上に何かがあるような 雰囲気を匂わせていることを。 まずい相手なのか、いやそれ以上にヤバい相手なのか。 自分たちは紹介したつもりではないのに 相手が勝手に紹介されたと言っていたのか。
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