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「あ、別になにか不快な感じだったとかそういうんじゃないんですよ。
ただ初めて会うっていうのによく俺の事をマスターだって
わかったなぁって、それが不思議だったもんで。
こんなちんけな店のことを宣伝してもらって、すごく嬉しいし、
感謝感謝です」
これ以上モヤッとした雰囲気を引きずっては、
せっかくのクリスマスパーティーが台無しになってしまう。
尚樹はひたすらヘラヘラと笑った。尚樹の気持ちを汲み取った長澤夫妻も、続くようにして笑いの中に包まれた。
「すみません、マスター。とにかくあなたの人柄が好きで、
やたらめったと宣伝しまくってしまって。
きっとあなたならって、みんなに薦めてしまって・・」
信彦がしんみりと語る。それほどまでに自分の事を受け入れ、
あてにしてくれて、そして好いてくれて。
バーという店の主として、極上の褒め言葉であり評価であると
受け止めたら、なんだか胸にジンときた。
目じりにほんのちょっぴりたまった涙をさりげなく拭う尚樹の仕草を
見てしまったからか、照美もそっと目じりを拭った。
その姿に気を取られて、尚樹が本当に聞きたかった事、
あの男はどういう人物なのかは聞けずに終わった。
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