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路地で会った男、来店
昨夜のにぎやかさと打って変わって、
今夜の店内は落ち着きあふれる静かな時間が過ぎていく。
常連客達のほとんどは、昨日が今年最後の大騒ぎとばかりに
やってきたので、今夜はなじみの客はいなかった。
10時を回ると急に客が引け、
20分もしないうちに店内は尚樹一人になってしまった。
閉店時間までまだあと3時間近くある。
さすがに店を閉める事は躊躇われるので、せめて日付が変わるまでは
客が来るのを待つことにしよう。酒は昨日散々飲んだから、
たまには豆からひいたコーヒーでも飲むか、と棚からミルを取り出し
コーヒー豆を入れた。
ガリガリと音がするたびにかぐわしい香りが店に充満していく。
「たまには喫茶店にでも変身するかな」
独り言ちながら湯を注ぐと、黒い液体から
さらに鼻腔を刺激するいい匂いが立ち上った。
マグカップに注ぎ一口飲む。はぁっと声に出して息を吐くと同時に、
店の扉がゆっくりと開いた。
めずらしく、ギイっと音をたてて。
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