路地で会った男、来店

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 え?と小さく声を上げた尚樹の、表情も動きも思考も、すべてが固まった。 体が・・無いんだから・・? 「あの・・おっしゃっている意味がよく・・」  わからない、という言葉までたどり着かない。 だんだんと顔の筋肉がこわばってきて、 だけどものすごく怖いかというとそういうわけでもない。 ただ、今いるこの空間は、空気は、普通ではないという事だけは 感じ取っている。  男は、驚かせてしまって申し訳ない、と頭を下げた。 「あなたには私らが見えるようになったんですよ。長澤さん・・  長澤信彦さんと照美さんのように、  私たちと会話ができるようになったんです」 「長澤・・え、信彦さんと照美さんのお知り合いですか?」 「ええ。それに一度、あなたにもお会いしていますよ、  ほら、ジャズの聞こえる裏通りで」 「え・・あっ!あの時の?」  買い出しの帰り道、裏通りの外灯の下にたたずんでいた男に 声をかけられた。信彦と照美から聞いたと言っていた、あの男だったのか。  人相風体を思い出すことができず、 照美に聞いておきながらうまく説明できなかった。 ・・そうか、あの時の・・
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